この記事は2026年9月21日に、法令の本文・農林水産省の規格・各社の公式サイトを直接確認した内容です。
福岡のジャムを調べていて、先に書いておきたいことが2つありました。
- 「コンフィチュール」は制度上の区分ではありません。名乗るのは自由です
- 瓶の裏の「開封後は10℃以下で保存」は、その商品が低糖度であることの目印です
ジャムには、数字で決まった規格があります
ジャムは日本農林規格(JAS)で定義されています。現行はJAS 0524:2024(最終改正 令和6年8月19日)です。
| 糖度(可溶性固形分) | 果実等の含有率 | |
|---|---|---|
| ジャム 特級 | 40%以上 | 45%以上 |
| ジャム 標準 | 33%以上 | |
| マーマレード 特級 | 30%以上 | |
| マーマレード 標準 | 20%以上 |
測り方まで決まっていて、20℃における糖用屈折計の示度を読み取ります。
⚠ 「ジャムの標準は30%」と書いているページを見かけたら、それは誤りです。30%はマーマレードの特級の数字で、取り違えが起きやすいところです。告示の本文は33%です。もうひとつ、農林水産省のサイトには2015年版の古いPDFがまだ置かれていて、検索すると上位に出てきます。
マーマレードの条件は「柑橘」ではなく「皮が見えること」
JASの定義はこうなっています。
- マーマレード… かんきつ類の果実が原料で、かんきつ類の果皮が認められるもの
- ゼリー… 果実等の搾汁を原料としたもの
- ジャム… マーマレードとゼリー以外のもの
柑橘で作っても、皮が入っていなければマーマレードではなくジャムです。
「コンフィチュール」は、どこにも出てきません
探しました。JASの本文、食品表示基準の条文、そして721ページある食品表示基準のQ&A——いずれにも「コンフィチュール」という語は1回も出てきません。
制度上の区分はジャム/マーマレード/ゼリー(+プレザーブスタイル)の4つだけです。コンフィチュールと名乗っている商品も、法律上はこのどれかに当てはまります。呼び名が違うだけで、別の基準があるわけではありません。
糖度は、味ではなく「表示」と「保存」を変えます

ここがいちばん実用的な話です。
食品表示基準の別表第19に、こう書かれています。
糖用屈折計の示度が六十ブリックス度以下のものにあっては、「開封後は、10℃以下で保存すること」等と表示する
つまり「開封後は10℃以下で保存」と書いてある瓶は、糖度が60ブリックス度以下ということです。裏のラベルを見れば、その商品が甘さ控えめかどうかが分かります。
実際に福岡の商品で見比べると、はっきり違います。
| 商品 | 保存方法の表示 |
|---|---|
| メゾンスワロー(宗像市に工房)のコンフィチュール | 「開封後は10℃以下で保存し、なるべく早めにお召し上がりください」 |
| 糸島正キの糸島コンフィチュール あまおう | 「常温/開封後は、冷蔵庫内で保存し、お早めに」 |
どちらも「コンフィチュール」を名乗っていますが、表示の書き方が違います。前者は基準が求める「10℃以下」の書き方をしています。
「糖度が低い」と宣伝するのは、原則として禁止です
意外に思われるかもしれませんが、表示禁止事項にこうあります。
通常より糖度が低い旨を示す用語
ただし例外があって、糖度55ブリックス度以下のものについて、その糖度を下回らない整数値で「糖度50度」のように併記する場合は書けます。「低糖度」とだけ書くのは駄目で、数字を出すなら書けるという作りです。
もうひとつの禁止事項は「2種類以上の果実等を使ったもので、特定の種類を特に強調する用語」です。こちらは2種類以上使っている場合の話なので、いちごジャムのような単一の果実には掛かりません。
2025年3月にルールが減りました。しばらく新旧が混在します
2025年(令和7年)3月28日に、ジャム類の個別の表示ルールが公布と同時に見直されました。減ったのは次の4点です。
- 名称以外の項目(原材料名・添加物・内容量)の個別規定がなくなった
- 缶詰についての「開缶後はガラス等の容器に移し換えること」が削除された
- ジャム類の表示の様式に関する規定が、項目ごと消えた
- 表示禁止事項が4項目から2項目に減った(「特級」と紛らわしい用語、果実等を多く含有している旨、が消えた)
⚠ ただし経過措置があります。2030年3月31日までに製造されたものは、従来の表示のままで構いません。つまりこれから数年は、棚に新旧の表示が混在します。古い書き方の瓶を見ても、違反ではありません。
JASの「ジャム類」には、野菜と花弁が入っています
定義をもう一度見てください。
果実、野菜又は花弁を砂糖類・糖アルコール・蜂蜜とともにゼリー化するようになるまで加熱したもの
果実だけではありません。だから糸島で作られているにんじんのジャム、なすのジャム、バターナッツかぼちゃのジャムは、変わり種ではなく定義上まっとうなジャム類です。
糸島市の公式サイトも、この作り手を「農薬不使用野菜、添加物不使用、フードロス削減のポリシーを掲げ」「現在は地元の野菜や規格外野菜でジャムを製造」と紹介しています。
福岡は「ジャムの産地」ではありません
ここは正直に書きます。調べるほど、福岡にジャム産業と呼べるものは見当たりませんでした。
- 日本ジャム工業組合の組合員21社のうち、福岡県にあるのは1社だけです(みやま市のタカ食品工業)。しかも同社の主力は学校給食向け・業務用・OEMで、OEMの最小ロットは「ジャム・フラワーペースト300〜500kg」です
- 福岡県の果樹統計に「ジャム」という仕向け区分そのものがありません。令和6年産の調査を全部見ましたが、用途別の内訳が出ているのはぶどう(缶詰用・醸造用・果汁用)・うめ(梅干・梅漬け用、梅酒等飲料用)・干し柿などで、ジャムは出てきません
※念のため補足すると、「福岡のジャム屋は1社だけ」という意味ではありません。21社というのは全国の工業組合の名簿で、下に挙げる作り手はいずれも組合員ではありません。
そのかわり、規格外の果実と野菜の受け皿になっています

福岡でジャムを作っている人たちを追うと、出発点が似ています。
ジャムハウス(北九州市小倉南区)
北九州市の公式サイト(産業経済局農林水産部農林課)に紹介されています。昭和60年に農家の女性9人で結成されたグループです。
最初に誕生したのが「いちじくジャム」。市場に出すことができない規格外のいちじくをなんとか活用できないかと…
いちじくは品種蓬莱柿(ほうらいし)を使い、「糖度をギリギリまで下げているので、甘さ控えめで上品な仕上がり」とのこと。販売はJA北九直売所の大地の恵み西中店・曽根店です。
(小倉南区大字合馬165/093-451-2296/代表 永津てるみ)
※このページの本文に「その後、約30年活動は継続され」とあり、原稿は2015年前後のものです。人数や連絡先はその時点の情報です。
いとしまジャム(糸島市)
上に書いたとおり、地元の野菜と規格外野菜でジャムを作っています。にんじんとかぼす、なすとシナモン、甘夏とコーヒーのマーマレードなど。原料に農園名を明記しています。
統計で見ても、加工は「主役」ではありません
福岡県のイチジク(令和6年産)は、収穫量680.219tに対して加工向けは82.884t。全体の1割強です。加工は余った分の出口という位置づけが、数字にも出ています。
⚠ ひとつ注意があります。福岡県の統計は品種ごとの表が並んでいて、その下に合計があります。蓬莱柿だけを見ると169.5tで、これを県全体と取り違えると4分の1の数字になります(県で最も多い品種はとよみつひめで434.975tです)。
買えるもの
- JA柳川「あまおうジャム」160g— 原材料は苺、砂糖、レモン果汁のみ。砂糖は北海道産甜菜グラニュー糖。JAの自社サイトでは「各店舗にお問い合わせください」となっていますが、JAタウンでは830円(税込)で購入できます
- JA柳川「いちじくジャム」160g— こちらはいちじく、砂糖、レモン果汁のみ
- 糸島正キ「糸島コンフィチュール あまおう」150g 1,188円(税込)— 原材料はあまおう、砂糖、レモン汁。賞味期限180日
- メゾンスワローのコンフィチュール(60g・賞味期限180日)— 道の駅むなかたのオンラインショップで販売
- タカ食品工業— 業務用が主力ですが、自社のオンラインショップがあります(イチゴジャム15g×40個で717円など。送料は一律500円、3,000円以上で無料)
この記事で確認できなかったこと
- JA柳川のジャム取扱店の一覧— 公式PDFに取扱店の表はありますが、多段組で○印の列が確実に読み取れませんでした。確実に分かったのは2店舗だけです
- ジャムハウスの価格・内容量— 公式の紹介ページに記載がありません
9月の時点で確認できなかったもののうち、次の2つは2026年10月11日に公式で確認できました。
- メゾンスワロー— 原材料は「いちご(福岡県宗像市産)、砂糖(てんさい含蜜糖)、レモン果汁」、製造者はメゾンスワロー(宗像市平井1-10-5)(道の駅むなかたの通販ページ)
- いとしまジャム— 公式ショップの価格は864〜1,404円。ただし12品中10品が売り切れで、2026年1月から一部の内容量が120gから110gに変わっています(公式ショップ)
最後にひとつ。検索で「福岡 ジャム」と調べると福岡正信自然農園が上位に出てきますが、ここは愛媛県伊予市です。「福岡」は創始者の姓であって、県名ではありません。
価格や取扱は変わります。買う前に、その販売ページの表示をご確認ください。
出典(公式サイト)
この記事の確認に使った主な公式ページです。内容は変わることがあるので、出かける前・買う前にリンク先で最新の情報をご確認ください。

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